借金の原因にも色々あると思います。
生活費や事業資金、ギャンブルや色事や酒、買い物といったところが多いかと思います。
私が借金を作った原因というのは、かっこよく言えば自分の「夢」を叶えるため。
でもまあ今となって振り返ってみるとそれもまた自分の欲望を叶えるためと言ってもいいと思います。
子供の頃の夢を、自分の子へ託すためにやらせた野球。それが借金の始まりだった
私の小さい頃の夢はご多分にもれずプロ野球選手でした。そしてその前に当然「甲子園」に出るというのが私の目標でした。
しかしその夢は小学校、中学と進む頃には現実に直面してしまいました。
高校では野球部に入ることもなく、半分グレてしまいました。そして卒業後は、知り合いのツテをたどって塗装業の見習いに入りました。小さい頃の夢なんかはまったく忘れていました。
その後、結婚して息子二人に恵まれたのでした。そして子供とキャッチボール等しているうちに、なんとなく自分の子供が周りの子供とモノが違うように思えてきたのでした。
そうなると昔の虫が騒いできます。
子供二人を野球部に入れてしまうまで時間はかかりませんでした。ただその時に一番苦労したのが女房のことです。
彼女は元々スポーツなんかに縁もなく、しかも周りのママ友からは「子供を野球部に入れると、時間も取られるし、何よりお金が羽根を生えたように飛んでいく。」と聞かされてましたから、大反対です。
そこで私がなんとか頼み込んで、できるだけ手間をかけないということと、お金に関することは全て私が責任を持つという約束をして、なんとか子供に野球を始めさせることができました。
道具や付き合いなど、意外とかかる習い事の費用
当時、私は独立して塗装業を営んでいましたからそれぐらいなんとかなるってタカをくくっていました。しかし入部させてみると思いの他お金がかかることとがわかりました。
部費や道具代、ユニフォーム代はもとより、遠征費やプロテイン等の補食費やその他差し入れをしたりといった飲み食いといった付き合いなんかも計算外にかかってしまいました。
道具にしても元々凝り性の自分ですから、あのバットが飛ぶと言えば飛びつき、グローブも成長に合わせてオーダーをし、スパイクなんかも最高級のものをいつもあてがっていました。
それでも最初は商売も順調だったのでなんとかなっていたのですが、その時、アレが起きました。「リーマンショック」です。
それ以降は、パッタリと受注が減り、また無理して取った仕事で不渡りを掴まされたりといったことが続き、雇っていた職人も1人、2人と減らしていき、最後は自分ひとり所謂「一人親方」という状態でなんとか食いつないでいるような状態でした。
そんな時でも子供に不憫な思いをさせたくなかったのと、そして何より自分の夢をあきらめきれなかったため野球関係の出費を減らすことができませんでした。
それどころか、硬式野球のクラブチームに二人とも入れてしまったためにだんだん出費は膨らむばかりでした。
仕方なしに最初はわずかばかりの蓄えを切り崩したりしながらやっていましたが、そんなことができるのもしれています。蓄えもじきに底をついてしまいました。
ただ、子供には金銭的な理由で野球をやめてくれなんてことは言えるはずもなく、また自分もその時のひと時の楽しみを失うのがいやだったので仕方なく借金に手を染めてしまいました。
ついに借金に手を出す羽目に。最初は知人に借りるところから始めたが…
もちろん、女房には言えませんでした。
最初は、彼女と繋がりのない知人になんとか頼み込んで借りたりしていたのですが当然返さなくてはいけません。
しかし、劇的に仕事の業績が上向くわけもなく、借金を返すために、また違う知人から借りるという所謂「自転車操業」のような状態になっていきました。
そうやって金策のことばかりに頭がとられると今度は、仕事の方にも影響が出てしまい、ミスが多くなり、それをやり直すためにさらに手が取られるといった状況になっていきました。
そうこうしている間にも知人に借りた借金の額は膨らんでいき、そして借りれる知人というのもなくなって、いよいよ追い込まれていきました。
こんな時、普通なら消費者金融や銀行のカードローンなんかでお金を工面するところなんでしょうが、私の場合は女房に大見得を切った手前、彼女にばれるのが怖かった。
またばれて今の楽しみを手放すのがいやだったので、そういうところで借りるのを躊躇していました。
そういったところで借りると、当然、家に何らかの連絡が来るだろうし、万一支払が滞った時には、家に取り立てがくると思ったからです。
理由は、女房に言い出せなかったから…。金融屋からお金を借りてしまった
そこで、ダメだとは思いながら"いわゆる"金融屋さんなどから借りてしまったのです。
当然、利息も消費者金融やカードローンに比べると高いのは分かっていましたが、その時はもう正常な判断が出来なくなっていて、ひょっとしたら大きな仕事が入ってきて一気に払えるかもしれない、この借金地獄から抜け出せるかもしれないぐらいに思っていました。
奇跡の逆転満塁ホームランが出るかもと思っていたのです。しかし、そんなことは起こるはずもなく、当然、また別の金融屋さんからも借りたりなどで利息や借金の総額は膨らむばかりです。
幕切れは当然来ました。上の息子がなんとか甲子園の常連の有名私立校に入学が決まったのです。飛び上がるほど嬉しかったのですが、入学にあたって必要となる諸々の費用が工面できません。
そして、今まで借り入れた借金も200万を超え、そして利息も払える目途がなくなってきました。後は、「取り立て」を待つばかりになってしまいました。
そうなると、家にも連絡があるでしょうし、いつまでも内緒にしとけるわけではなくなってきました。上の子の入学式を明日に控えた日、ついに女房にすべてを打ち明けました。
こっぴどく怒られ、そして呆れられました。「もっと早くに相談していれば、余計な借金がかさむこともなかったのに!」まったくその通りです。
立て替えてもらうことで借金の返済はできたが、嫁や子供、知人と迷惑をかけてしまった
そして、なんとか今までの借金を立て替えてもらうということで借金の整理はできました。
当然、それ以降は彼女には頭は上がらず、野球部関係者との今までの付き合いもできなくなってしまいました。それらを見ていた子供達にもつらい思いをさせました。
上の子は入学が決まってしまっていたのでなんとかそのまま卒業させましたが、下の子は公立高校へ行ってくれました。
結局、私が見栄をはってしまったり、夢と言えば聞こえがいいですがあきらめきれない欲を出したがために多くの人に迷惑をかけ、お金も失ってしまいました。
今は、子供達は二人とも成人して、「普通」に暮らしています、勿論甲子園にも出ませんでしたし、プロ野球選手にもなっていません。
「欲」は正常な判断をできなくさせます。それ以降は地道を絵に描いたような暮らしをしています、一人でプロ野球や高校野球を見ることが多いですが、もう果たせなかった夢を見ることもなく、とんでもない苦い思い出となりました。「あのお金があれば」というのは常に頭をよぎります。
私が今回の借金騒動から学んだのは、
- やはり何事においても熱くなりすぎないこと
- そして今回は女房に対してでしたが、周りに対して自分の見栄や変なプライドを守るための隠し事や虚勢を張らないことです。
最初のボタンの掛け違えはこれからも多々あることだと思いますが、とにかく今回のようなことにならないように、小さいうちに火を消すようにしていきたいとおもいます。